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拡大する不平等と塀の中の良心「オレンジイズニューブラック」シーズン6 感想

最高の時事女囚コメディ(←勝手に命名)「オレンジイズニューブラック」が帰ってきた!例年(シーズン2からシーズン5まで)なら6月に新エピソード配信のところ、今年は7月末だったのでじれったい思いでしたが...待った甲斐がありました。

 ネタバレ(むしろネタバレしかないので)注意です。

シーズン6 予告編


ORANGE IS THE NEW BLACK Season 6 Trailer (2018) Netflix TV Show HD

これまでの話

Season 4の最終話で受刑者のプッセイがベイリー刑務官に取り押さえられて圧死。この事件がきっかけとなり、Season 5では残った刑務官を人質に立てこもって3日間の暴動に発展。受刑者たちはつかのま手に入れた自由(とカオス 笑)を楽しむ。テイスティを中心にアフリカ系グループが受刑者の待遇の改善を求めて交渉する。要求のほとんどの項目でリッチフィールド刑務所を運営する民間企業MCC側との合意が取り付けられたが、暴動の発端であるベイリー刑務官の起訴と収監が実現しなかったため交渉決裂。武装した特殊部隊が刑務所に突入し、受刑者を拘束する。混乱の最中にピスカテラ刑務官が特殊部隊の発砲をうけ死亡。地下のプールに立てこもっていたパイパーやアレックスたちの運命やいかに...?

またしても「お前らの血の色は何色だ~~!?」的な理不尽案件

シーズン5の最終話に登場する特殊部隊のなかに不慣れな若者がいるんですね。ペッパー弾を装填した銃の操作がよくわかってなくて、でもアドレナリンで興奮している感じで。おいおい、大丈夫かな~と思っていたら、地下室から出てきたピスカテラの眉間にこの若者が撃ったペッパー弾が直撃して彼を殺してしまいました。ペッパー弾や催涙弾は攻撃対象にダメージは与えるものの致死性の低い武器だと思っていたんですが、当たりどころが悪ければ殺してしまうらしいです。こわい。*1 

都合の悪い話は隠蔽したくなるのが東西問わず共通なのかも。隊長の「納得のいく話を作れたら俺たちは英雄になれる。受刑者のひとり...ばあさんか黒人でもいい。そいつが銃を乱射(したことにしよう)」という一言でテイスティの運命が大きく変わってしまいました。

もはや影の主人公(?)テイスティとBlack Lives Matter

シーズン4あたりから「パイパー空気w」って冗談半分でネタにしてたんですが、もともとパイパーよりも圧倒的にサブキャラが魅力的な群像劇なので、観ているこちら側も彼女のことは意識がおろそかになりがちでした。シーズン5ではテイスティの大躍進でMCC側と交渉が進み、あきらかにテイスティがメインエピソードになるも苛烈な状況が彼女を襲い、ピスカテラ殺害容疑で有罪判決。一方のパイパーは突然の早期釈放。

番組のエクゼティブ・プロデューサーのタラ・ヘルマンはパイパーについて「原作を書いたパイパー・カーマンは15か月の服役の判決を受け13か月で出所し、刑務所内の体験談を出版したので(フィクションのキャラクターの)パイパーの早期出所も脚本陣の頭の隅にあった(後略)」と述べ、テイスティについては次のように答えています。(以下わたしのテキトー翻訳で引用します)*2

"Danielle is an amazing actress and we like to see her be fun — because she’s so funny as well as being great about the dramatic stuff — but you want to tell the story that’s true to that character and true to the world we live in. We talk about this a lot but you don’t have a choice but to get a little heartbreaking at times," 

(テイスティを演じた)ダニエル(~ブルックス)は素晴らしい女優で、シリアスな場面と同じくらいコメディ演技にも長けているので、私たちは面白い彼女も見たい。でもキャラクターにとって、私たちが暮らしている世界にとってより真実味のあるストーリーを伝えたいんだ。このことについてはよく質問されるが(現実社会に起こっていることを反映させた結果)現時点ではつらい結末を迎える以外に選択肢がなかった。

"We’re craving old Taystee but the reality is that this is what happens. It’s out of their control; it’s out of her control. She’s such a light — the character and the actress — so we always hope to show light and darkness. I’m confident that we’ll get to that place again, but for now, this is the reality that she’s living in. Just awful."

昔のテイスティも恋しいけれど、これが現実に起こっていることなんだ。彼女(たち)はコントロールできない(ところで物事が動いている)。テイスティもダニエルも光のような存在で、光と闇の両方を番組の中で見せられたらと思う。また明るいテイスティに戻ると信じているけれど、これが彼女が直面している現実なんだ。酷いありさまだよ。

 もともと実際の刑務所システムの不正義や、腐敗や、人権侵害を鋭く批判してきた同番組だけに徹底したリアリズムにこだわっているようだと分かり、胸糞~ないきさつと判決だなぁと思いつつも納得しました。プッセイの死も、テイスティの殺人有罪判決も有色人種が警官によって明確な理由なく射殺されたり、白人の陪審員が圧倒的多数の法廷で不利な判決が出されたりするアメリカの現実に対するCriticismなわけですね。こうやって現実の不正義を映し出しつつエンターテイメントとしても成立している作品の稀有なことよ。日本でも最近、さまざまな不正義が明るみに出てると思うのですが、カウンターとしても面白い作品が出てくることを願います。

 とは言いつつも、本当にテイスティはこのまま一生刑務所の中で過ごすことになるのか?ということが気にかかって仕方がありません。特殊部隊の隊長は親交のある(?)検視官を呼んでいたし、テイスティの刑事裁判で証言台に立ったのはシンディのひとりだけで、異例の速さで判決が下されたことも引っかかります。アメリカの訴訟シーン(のドラマ)は13 reasons whyぐらいでしか観たことがないのですが、ドラマ内でさえ関係者十数人が一人ずつ証人喚問を受けてました。私の乏しい知識をもってしても、シンディだけでなく暴動の首謀者と目されていたレッド、パイパー、グロリア、フローレス、ダヤ、マリアあたりには少なくとも証言を求めるのが定石なのではないか?とも思ったり。そもそも殺害容疑をかけるまでのいきさつが真っ黒なので判決を急いだのかもしれませんが、次のシーズンではそのあたりの詳しいエピソードや不正が明るみに出るなど、進展があればいいなと思っています。

その他サイドストーリーいろいろ

ダヤとダディ最高じゃない??

OITNBの中で推してるキャラは誰?と聞かれたら。1位 ダヤ 2位フランカ&マリッツァ 3位ニッキ&ローナ かな…とランキングを作るぐらいダヤ好きな私。パワフルなママ、アレイダの陰に隠れてあんまり他キャラとの絡みがなかったダヤですが…ここにきていきなり百合〜〜突然の百合〜〜〜〜満開の百合〜脚本家のみなさま、ありがとうございます。あとダーシャ・ポランコ様(俳優a.k.a 中の人) ただTwitterでたまたま見かけた海外ファンの人がDaya is such a self destructive person(自分から危ない道を選ぶ/自ら失敗する/ダメになる人)と言ってて本当にその通りだなと。シーズン5でアレイダにマナティじゃなくてサメになれと言われていたのもつかの間、鎮痛剤アディクトになった上に刑務所内でドラッグをさばくビジネスも始めてるし。目が離せません(悪い意味で)

シンディー×フランカの友情の安心感

マリッツァ×フラカはベスト・コメディ・コンビだって今でも思っているんですが、テイスティと離れたシンディと、マリッツァと離れたフラカが刑務所内のラジオ放送でコンビを組んだのは当然の流れだったかも。テイスティとの友情と、ピスカテラ事件のからくりを知っているため自分の身を守る嘘をつくことの間で揺れ動くシンディに、「匿名の手紙書いたときから知ってた。私はバカっぽく聞こえるかもしれないけど、すべては自信がなさげな男にモテるための計算なの」とさりげなく言ってのけるフラカ。可愛くて、見た目だけの女じゃない、という胸アツな展開が最高でした。

若キャロルと今キャロルの顔面近似値がやばい 

配役したひと神だと思ってます。キャロルとバーブの冷戦に関しては、些細なきっかけも含めてほとんど笑い話のように感じられました。キャロルもバーブも愚かで、二人の対立を利用しつつ逃げ切ったフリーダが何枚も上手だったって話なのでシーズンのなかでのこの二人の動き自体にはあんまり惹かれなかったんですけど。若キャロル(フラッシュバックで出てくるキャロル役)と今キャロル(現在のキャロル役)ともに顔が似てるうえ、ノリノリで演じきってるのでめちゃめちゃ魅力的でした。アレックスもキャラクターとして大好きなので、メガネの似合うワルそうな女が私の弱点なのかもしれない...。フラッシュバックで出てくる俳優が現在のキャラクター(を演じる俳優)そっくりという、謎の配役クオリティの高さは今回も維持されていました。余計な違和感で集中力をそがれないのは嬉しいが、どこから見つけてくるんだ...

ペンサタッキーに親近感を覚える日が来るとは思ってなかった

シーズン1では狂信的なキリスト教信者で、パイパーに木製の十字架で殴りかかる、完全にサイコなvillanだったティファニー・ドゲット。その後、チャーリー・コウツ(ドーナッツ)とあんまり健康的とはいえない交際関係を築き、暴動のさなかに脱走してドーナッツと逃避行のロードトリップへ。森の中でキャンプするものの、衝動的にキレやすいドーナツから逃げて、自首。シーズン5の終わり方をみて「看守にレイプされても惚れさせればOK、みたいなことになっちゃわない?」と心配してたんですが杞憂でした。全シーズンを通して性的に搾取され続け、かつての子分、リアンとアンジーのおバカコンビにもいじめられて散々な目にあってきたドゲット。一般的な「かつての悪役が良いやつに変身する」現象は「安直な長期連載あるある」という気がしてあんまり好きじゃないんですが、酷い扱いを経て許しの心を持つ、誠実な人に変化していったのは大きな発見でした。聡明で面白いのにドラッグ中毒者なのが珠に傷(愛すべきクズ、という感じでチャーミングだったりもするんですが)というキャラだったニッキーも、今シーズンではラリってバッド入ったバーブをシラフに戻す手助けをしているし、かつてパイパーに散々な目に合ったマリアも珍しくキックベースの誘いに乗ってみたり。シーズン5のフィナーレを振り返ると、フリーダが ”We keep our dignity"と言って手を取り合い特殊部隊の突入を待ったところは印象的でした。悪人と善人が一人の人間の中に存在しうることを描いたうえで、周りから悪人、取るに足らない人間と決めつけられようとも善い意志を持って己の尊厳を保つことが大事、というのがシーズン5のメッセ―ジなのでは、と思っていました。このKeep our dignityというセリフは一貫して意味を持ちつづけたまま、今シーズンでは一歩進んで、一人が良い意志に基づいた行動が起こす変化はなんてことなくても、偶然が重なりあって衝突(aka キックベースでの殺し合い)が避けられる、という現象が描かれていてなかなか面白かったです。

まとめ

また長文になってしまった~。簡潔に要点を抑えた感想を書ける人、マジ憧れます。シーズン全体の感想としては、テイスティとフローレスのゆくえが気になるばかり。テイスティーを巡るメインストーリー(と呼んでも差し支えないと思う)が時間を割いて描かれているのは最高なんですが、新しいキャラたちによるサイドストーリーはやや進みが遅くてじれったいし、軽すぎるような...と思いながら見ていました。かつての軽警備から重警備施設にばらばらに移送されて、馴染みのキャラがだいぶ姿を消していたので、見慣れないせいもあるかもしれません。まあダディとダヤは最高だったけど。個人的にもう一回見たいキャラは、ソウソウ、マリッツァ、ブー、ジャネイ、アリソン、チャン...。

最後の最後に驚きの展開を見せ、一年後の次シーズン公開まで引っ張るのはもはやOITNBの伝統芸かもしれません(笑) フローレスは早期釈放直後にICE(U.S. Immigration and Customs Enforcement: アメリカ合衆国移民・関税執行局)関連の収容施設に送られたんだと思うんですがどうなっちゃうのかな。塀の中の対立よりも、塀の外へ一歩踏み出したときの社会の不正義や格差の方が深刻であるというメッセージは感じました。たしかシーズン7までの製作が決定していて、それ以降は未定なはずなんですが、次シーズンで完結だとするとシーズン7への期待とハードルは高まります。きっちり回収して終わらせてほしいですね。ではまた!

 

*1:Wikipwdia英語版 より

Pepper-spray projectile - Wikipedia

*2:The Hollywood Reporterのインタビューより

www.hollywoodreporter.com