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風が吹けばヤクルトが品切れ?王道青春ラブコメ『好きだった君へのラブレター』感想

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概要

スタッフ・キャスト

監督 スーザン・ジョンソン

脚本 ソフィア・アルバレス

原作 ジェニー・ハン "To All the Boys I've Loved Before"

出演 ラナ・コンドル(ララ・ジーン)

   ノア・センティネオ(ピーター・ケヴィンスキー)

   ジャネル・パリッシュ(マーゴ)

   アナ・キャスカート(キティ)

あらすじ

ララ・ジーンはロマンス小説が好きな高校生。学校での自分は「目立たない」と思っている。好きな人が出来るたびにラブレターを書いてはこっそり保管していたが、そのラブレターが全員に届いてしまうことに。そのなかには初恋の人である姉の元彼も含まれていた。事態を打開するため、自分とは正反対な運動部の同級生と偽の交際契約を結ぶことにするが...

予告編


To All The Boys I've Loved Before | Official Trailer [HD] | Netflix

感想

王道な学園もののラブコメ

いやもうね、私は弱冠24歳なんですけど「学園モノ」とか「ティーンズラブ」みたいなジャンルがだんだんキツくなってくる年頃なわけですよ。このジャンルが悪いというわけではなくて、高校生だったのも8年か9年ぐらい前なので「誰と一緒にランチを食べるか揉める」とか「学校こそが世界のすべてで、狭いコミュニティゆえに交際関係のゴシップは一瞬で広まる」とかそういう「学園もの文法」にいちいち「ターゲット層じゃない感」を感じて集中できないわけですね。こないだも菅田将輝めあてに『溺れるナイフ』見ようとしてリタイアしたし。

そんなわけで、この『好きだった君へのラブレター』もタイトルだけ見ると甘々成分全開な感じです。twitterで話題になっていなかったら観なかったかも。しかし、心配は無用でした。率直だけど思いやりのある物言いと彼氏の陰に頼らずトラブルを解決し、やばそうなフラグはがんがんへし折っていく行動力が素敵。一言で表すなら「守ってあげたい系女子」じゃなくて「自分のケツは自分でピカピカに拭く系女子」。うーんコレコレ!という感じです。そんなしっかり者だけど恋愛とは無縁だった彼女がフェイクとはいえ「恋愛ごっこ」を演じているギャップが面白いのです。

ストーリーは超王道なラブコメです。手紙を送った一人で「付き合ってるフリ」をしてるフットボール部のイケイケ男子はわりと早い段階でララ・ジーンのことが好きになり、初恋の人である姉の元彼にもうっすら心を寄せられている。最初はララ・ジーンとピーター・ケヴィンスキーの両方に「忘れられない人」がいて、気を引くための「二番目」だったんですが、緊張する「初恋のあの人」より「気軽に話ができる親友ポジションの二番目」にいつまにか恋に落ちてしまうのもラブコメあるあるですよね。

キスシーンのビデオが流出してしまい、あらぬ噂を立てられたりプリントアウトした画像をロッカーに貼られるといったトラブルもありますが、「13の理由」の登場人物全員にあたたかい洋服と美味しいご飯を食べさせたようなやさしい世界観なので深刻なイジメに発展するようなこともありません。

「ドリーム彼氏」ことピーター・ケヴィンスキーもララについて「君の方が本音で話が出来るし、オシャレ」と評している。あからさまに元カノサゲをせず、生まれつきの容姿より内面やセンスを褒めるピーター、分かってるな!「元カノは可愛くないし」なんて言われた日にゃあ、反応に困りますからね。ダーク成分はかなり抑えめですが、ほっこりしたい気分のときにおすすめな映画です。

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ララがネットで買ったアーミーブーツを「あの靴、オシャレだったよ」というピーター

 

生意気な妹キティこそMVP

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週末を毎日ひとりで過ごす姉を案じて、姉が書き溜めていた妄想ラブレターを勝手に投函した妹キティ。だいたい妹ポジションだと生意気で遠慮はないけど真髄をついたことをポンポン言う、みたいな役回りが多いと思うんですが、キティも例にもれずこのタイプです。

リアルに妄想ラブレターを投函されたら恥ずかしくて地球の裏側に引っ越したくなるかもしれませんが、ここはラブコメ・ワールドゆえ、問題ありません。小さなトラブルがドタバタと幸せを呼ぶのです。今回はラブレターの宛先のひとりにのちの恋人であるピーターが含まれていたので実質的な恋のキューピッド(たとえが古い)はキティということに。そのほかにも「コリアンヨーグルトスムージー」がどこに売っているのかピーターに教え、9歳なのにパパをチェスで打ち負かし、ララジーンが捨てようとしていたピーターのからのラブレターもすべて別に保管。トンデモナイが、面白いし、よくできた妹である。三姉妹の長女でララジーンの姉もちょろっと登場するものの、スコットランドの大学に進学したのであまり実家に帰省できず、この映画の脚本を成り立たせているのは実質この妹。母を亡くし、だれかと深い関係を築くのを怖がっていた姉に一歩踏み出させたのもこの妹。現実世界の(私の)妹なんかせいぜい勝手に私の洋服を着ていくくらいなのになあ。まあそれが現実ってもんですよね。

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「土曜の夜に妹とドラマの一気観してるの悲しくない?」という台詞を作るNetflix様 余裕のポーズ

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クジャク色の壁が素敵

「コリアンヨーグルトスムージー」ことヤクルト 

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劇中にはララ・ジーンの好物である“韓国製のヨーグルト・スムージー”として登場し、正式名称は紹介されないものの、形状や色などは明らかに「ヤクルト」だと視聴者の間で話題となった。

アジア圏でも広く販売されている同商品は、アメリカ国内のアジア系スーパーなどでも取り扱いがある店舗も。劇中でピーターが試し飲みするシーンなどが話題となり、「飲んでみたい! 」とアジア系スーパーに駆け込む視聴者たちが続出した。ツイッター上では「いつも行くアジア系スーパーに行ったら、ヤクルトが品切れしていた」、「懐かしくなってつい買いだめしてしまった」などの報告コメントが相次いでいるほか、米経済メディア、ブルームバーグまでもがこの現象に着目し、顕著な経済効果として取り上げるまでになっている

「ヤクルト」が海外で人気に!映画『好きだった君へのラブレター』が影響 - フロントロウ

netflixでヤクルトを見かけたり、アメリカでヤクルトが爆売れする日が来るとは。もっとも、ラティーノ・コミュニティの間ではポピュラーな飲み物として認知されていて「いまさら?」と言っている声も。今回のヒットは偶然だったにせよ、ちらっと写り込んだだけでこんなに認知されるなんて、コンテンツマーケティングの可能性って無限大だよねえ。(マーケティングについて何も知らない人の感想)

アンチ・ホワイトウォッシング

原作小説を書いたジェナ・ハンは映画化にあたり「ヒロイン役の俳優はアジア系」という条件を譲らなかったそう。*1

アジア系の表象を見慣れている日本だと「ヒロインがアジア系」というのは特段珍しくもないんですが、北米では原作ではアジア系の設定である役に白人が起用されるホワイトウォッシングがたびたび起こったり、アジア系の俳優は「従順でおとなしい」「空手が得意で特殊能力を持ったファイター」というようなステレオタイプな役柄にしか起用されなかったりという問題があります。

前者だと映画『アロハ』で中国系のルーツを持つ役をエマ・ストーンが演じたり、『ゴースト・イン・ザ・シェル』の草薙素子スカーレット・ヨハンソンが演じたのは記憶に新しいですよね。後者だと『キル・ビル』のGOGO夕張とかかな。

これらの何が問題かというと、アジア系の表象が少なく偏っていることによりアジア系へのステレオタイプを増強すること、それからマイノリティーの子どもが自分と共通点のある・親近感の湧くキャラクターを見つけられずに過ごしてしまうという点です。twitterや口コミサイトのレビューなどでは、映画やコミックで登場するマイノリティグループに属するキャラクターについて「このキャラが○○でなければいけない必然性がストーリーから感じられなかった」という感想を必ず目にします。最近だと『オーシャンズ8』とか(笑)。

しかし、本来は同性愛者でなければ/オール女性キャストでなければ/アジア系でなければ/アフリカ系でなければいけない理由づけなんてないんですよね。そもそも「マイノリティでなければいけない理由」が必要だと観客が思うことこそが非対称性を示していると思います。より実験的なオリジナル作品を公開しているNetflixはまたしてもグッジョブだね。メジャーな映画だと大きなスタジオほど世界規模での興行成績を狙う事情から白人多めになったり、偉いひとがほとんど白人だったりすることから白人系中心の作品になってしまう傾向があります。才能のあるアジア系の人がちゃんと起用されるのを願います。

社会の変革のために映画をみてるわけではないんだけど私はやっぱりバラエティが多い作品の方が楽しいし、「周縁の人々」とされるキャラクターが出てくる物語が好きだからね。

 

 

Netflix『グッドガールズ 崖っぷちの女たち』GOOD GIRLS シーズン1の感想

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And the good girls go to heaven, bad girls go everywhere

良い子は天国に行けるが、悪い子はどこにでも行ける

by Meat-Loaf

Meat Loaf: Good Girls Go To Heaven (Bad Girls Go Everywhere) [Live] - YouTube

このドラマを観はじめたのは、私のなかで特別に思い入れがある作品であり、何年か前にNetflixに加入したきっかけでもある『オレンジイズニューブラック』の最新シーズンを観終わってしまった8月初旬。オレンジ~は基本的に年に一回、6月か7月ごろに新シーズンが配信されるのがこれまでのパターンだった。ああまた一年待たなければいけないのか...という海外ドラマ欠乏症の離脱症状?を収めるべく、新しいドラマ(できればコメディで、内容は重すぎないけど皮肉が効いていて、飽きないやつ)を探していたときに「後で観る」リストに入れたきり存在を忘れていたこのドラマを発見したのであった。ここまで前置き。そんな経緯からなんとなく見はじめたドラマだったけれど、なかなか良かった。

概要

『グッドガールズ 崖っぷちの女たち』(原題:Good Girls)は2018年放送のアメリカのクライムコメディ・ドラマのTVシリーズ。2018年2月にアメリカのTV局NBCで放送され、2018年7月からNetflixで国際的に配信されている。

Amazon プライムビデオで配信されているTVドラマシリーズ『グッド・ガールズ!~NY女子のキャリア革命~』(原題:Good Girls Revolt) とは無関係です。

スタッフ・キャスト

制作 ジェナ・バンズ

出演 クリスティナ・ヘンドリクス(ベス・ボーランド

   レッタ(ルビー・ヒル

   メイ・ホイットマン(アニー・マークス)

   レノ・ウィルソン(スタン・ヒル

   マニー・モンタナ(リオ)

   リディア・ジュリエット(サラ・ヒル

   イジー・スタナード(セイディ・マークス)

   マシュー・リラード(ディーン・ボーランド

   ほか

予告編

 

あらすじ

 郊外に住む3人の母たちはそれぞれ異なった事情から経済的に厳しい状況にあった。シングルマザーのアニー(メイ・ホイットマン)は一緒に暮らす子どもの親権を巡って元夫から訴訟を起こされるはめになり、弁護士費用の工面に困っていた。腎臓疾患で移植待ちの娘をもつルビー(レッタ)の場合は、多額の医療費が家計を圧迫していた。アニーの姉のベス(クリスティナ・ヘンドリクス)は自動車販売会社を経営する夫を支える専業主婦だったが、夫の浮気と多額の借金の存在が発覚。八方ふさがりな現状を打破すべく、勝手を知っているアニーの職場のスーパーにおもちゃの銃を構えて強盗に入る。ただのスーパーの金庫に予想外に多額の札束が保管してあることに驚く3人。実は地元のギャングがドラッグで稼いだ金の資金洗浄に使っていたのだ。ギャングの息がかかった金を盗んだ3人に思わぬトラブルが襲いかかる...

 感想

 『ブレイキング・バッド』×『デスパレートな妻たち』+貧乏風味らしいよ

 ...というのはデータベースサイトIMDbのユーザーレビューより。他には「映画『テルマ&ルイーズ』っぽい雰囲気」と言ってる人も何人かいた。『デスパレートな妻たち』は未見なのでわからない。『テルマ&ルイーズ』とは「女性が主導権を取り戻すために盗みをする」というコンセプトの共通点はあるものの、逃避行やロードムービー的要素はないからあんまりかな。『ブレイキング・バッド』の初期シーズンのころの、やることなすことがいかにも「はじめて重大な犯罪に手を染めた素人」くさくて、観ているこっちが落ち着かないあの感じに近い。かくいう私もドラマを観すぎているただのパンピーなんだけれど。「医療費がかさんで違法な金儲けに手を出すしかない」「身内に警察官がいて隠しとおさなければならない」「一般市民なのにギャングと渡り合う必要あり」「真面目だったキャラが犯罪の快感にのめり込み、モラルがないように見えたキャラの方が引いてる」など細かい設定も似てるっちゃ似てる。この類似点が気に入らないIMDbレビュアーのなかには、"Breaking Bad" をもじって”Imitating Bad"というタイトルを付けている人もいたりして笑ってしまった。Imitating Bad, 訳すとしたらパクリ・バッドかな。主役が子育て世代で生活感ありまくりなズッコケ3人組という脚本のおかげで、露骨なパクリというほどではなく楽しめた。

 犠牲を払うのをやめ、立ち上がる女性への讃歌

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オーシャンズ8』がひたすらゴージャスで浮世離れした、「復讐」のためだけに宝石を盗む女たちなら、『グッドガールズ』は踏みつけられる足をはねのけ、力を取り戻す途上にある女たちの物語なのだ。彼女たちが盗みに入ったのはメトロポリタン美術館じゃなくて警備がガバガバな郊外のスーパー。「すべて奪われるのを黙って見てられない 自分たちで乗り切るの(ベス)」「すこしでもいいから私の話を聞いてくれないわけ?(ルビー)」という台詞は彼女らがおかれた状況を代弁するものである。覆面を被って強盗するスリルを味わっても、どん底の状況から一夜にして抜け出せるわけではない。強盗のその後も続いていく人生の話として良かった。

 I'm sorry for...

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強盗をしたあとも医療費がまかないきれず、ダイナーで働きつづけるルビーは客の男子高校生とその母親に軽いやけどをしたせいでクレームを入れられ、店長に謝罪を強いられる。長くなるので割愛するが、この子どもがスポイルされて育った、暇つぶしに店員に絡む「いかにも」なドラ息子で神経を逆なでするのだ。我慢の限界に達したルビーはこの台詞で一矢報いる。

「お気の毒に。あなたは品性にかけた愚か者で、サービス業の人に敬意を払えないかわいそうな人よ。自分の子供を疑いもせず他人に責任を負わせるなんてね。バカ息子を持って気の毒だわ。こんな表面の火傷は軽傷よ。ここに一緒に来てた友達もあなたと同じくらいバカで本当に気の毒よ。こんな奴らが国の将来を担うなんてあきれるわ。言いたいことは以上。」

日本語の台詞で書き起こすとなんだか高飛車な感じだが、信じてほしい。けしてそんなことはない。ルビーはこの直前まで実に忍耐強く接客していて、シーズンを通じて(比較的)良心を持ち続けたタイプだけに、一度だけ発したこの台詞が生きるのだ。派手なアクションもなにもないけれど、名シーンだったと思う。ちなみにこの5秒後に解雇される。

アニー可愛いよアニー

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真面目なしっかり者で正統派ゴージャスな長女に比べ、小柄でおしゃべりなコミックリリーフポジの次女。この辺の長女・次女像はどこの国でも共通なのか?とおかしかった。シーズン前半のエピソードではやることなすことがすべて裏目に出るんだけど、それでも好きにならずにいられない魅力的なキャラクター。彼女にはまさにHot messという言葉が似合う。ダークリップとグリッターのアイラインという野暮ったさスレスレだけどおしゃれに見えるメイクもまた良い。アニーはフェムタチっぽい雰囲気もあるし、レズだったらけっこうモテると思うんだけど。レビューでは「アニーがイライラする」って書いてる人を何人か見かけたけど、正気か?と思ってしまった(盲目)そういえばジェシー・ピンクマン(ブレイキング・バッド)もめちゃくちゃ可愛いと思ってたな、私...

 設定に多少、改善の余地アリ

ギャング頭のはずのリオはフットワーク軽くベスに会いに来るけど、ギャングの元締めって捕まるのを恐れるはずだから自分から取引先に出向いたりしないで手下を使うんじゃない?とか

最終話でとっさに人質のふりをして逃げるけど、監視カメラの記録からバレなかったのかな?とか

そもそも職場を強盗するのって声や見た目の特徴ですぐ身元がわれそうで最悪と思わなかったのかな?とかとか

疑問点はないわけでもない。

シーズン1の最後はベスがリオと夫に銃を構えて終わる。次のエピソードに含みを持たせた典型的なクリフハンガーなので当然シーズン2もやるんだよね?と思って待ってる。アニーとルビーの金欠は解消されたからあんまりブレイキングバッドする動機がないし、特にルビーの場合は警官の夫にお金の出所がバレてるので足を洗う以外に今後の選択肢は残されていないんじゃないかと思う。前のめりで危なっかしいベスをアニーとルビーが止められるのか?気になることが多すぎるので次シーズンも観るよ。

 

ひそかなお気に入り度 ★★★☆☆
ご飯中に気楽に見られる安心感 ★★★★☆  
打ち切りにならないか心配度数 ★★★★☆

『クレイジー・リッチ!』を観た中国系アメリカ人の記者が語る自身の経験がtwitterで話題に

概要

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"Crazy Rich Asians"(原題) はジョン・M・チュウ監督、コンスタンス・ウーとヘンリーゴールディング主演の、同名の小説を元にしたラブコメ映画で、米国では8月15日公開、日本では『クレイジー・リッチ!』として9月28日に公開予定のアメリカ映画です。日本の配給会社が邦題を決定する際にこの映画の重要な要素である「アジアンズ」をまるまる省いてしまったことにはいまいち納得がいかないのですが、それについてはあとで書くことにします。

中国系アメリカ人でハフィントンポストの記者、Kimberly Yamさんが映画を観たのがきっかけで語った経験の投稿が感動的だったので訳してみました。

 

ツイート 

 私は8歳だった。3年生のクラスが中華料理のデリバリーを頼み、私の父が配達に向かった。私は学校で父に会えることで有頂天になった。彼は私のヒーローだったからだ。しかし他の子どもたちは彼のことをどうも格好いいとは思わなかったらしい。彼らは父のことを笑い、アクセントを真似た。私は中国系であることが嫌になった。

私は9歳で、バレエの合宿に参加していた。他の女の子が私のことを「嫌っている」と誰かが伝えに来た。彼女は私の瞳が「醜い形」をしていると思っているようだ。私はまだその言葉がいかに傷つくか形容する語彙を知らない。それなのに、アジア人の特徴を持つ自分の顔が本当に嫌になった。私は中国系であることをもうやめたいと思った。

 

私は16歳だった。ハロウィーンの季節で、二人の生徒が「アジア人観光客」の仮装をして登校した。彼らはテープで目を吊り上げ、首にカメラを下げ、下手なピースサインをしていた。私は居心地が悪くなった。この仮装を不快に思うか聞かれたとき、私はノーと答えた。

私は周りからつまらない子だと思われたくなかったので、 他の人と一緒に笑った。私は中国系であることをもうやめたいと思った。

私は17歳だった。大学に進学し、他のアジア系の学生に出会った。彼らは私が一度も持ちえなかった誇りを持っていた。ある男の子と出会ったとき、彼は私がなぜ家族と同じ言葉を話せないのか不思議がった。なぜ私の大好物がグリルドチーズで、小龍包じゃないのかとも。私は家族が伝統的な生活をしてこなかったからだと答える。
でも、私はずっと前に文化を拒絶していたことを自覚していた。中国語を話すことをやめ、母の料理を「気持ち悪い」と言っていた。めちゃくちゃだったが、突然ピンと来た。忌み嫌っていた自分自身のルーツを取り戻すのに必死だった。私ははじめて中国系になりたいと思った。

私は20歳だった。過去の数年間、自身のアイデンティティを取り戻すように過ごした。家族の名前をタトゥーにして体に刻んだ。その漢字は永遠にそこにある。私は昔のような思いにさせることを誰にも許さなかった。私は中国系であることを愛していた。
私は25歳だ。すべてのキャストがアジア系の映画をスクリーンで観て、なぜか涙が止まらなかった。このような配役をハリウッドで一度も観たことがなかった。すべての人は美しい。私は中国系であることが幸せ。#CrazyRichAsians #RepresentationMatters

感想

 彼女が一連の経験のツイート群の最後に#RepresentationMattersというハッシュタグを付けているのがすべてだし、それこそがオールアジア人配役であることの意義ですよね。ハリウッドのショービズ業界においてアジア人はキャスティングされることが少なく、ようやく役を手に入れてもネイルサロンの店員やIT業界の男性など「いかにも」なステレオタイプの端役で、メインキャラクターとして出番が回ってくることは少ないという現状*1から変化をもたらす重要な作品になってほしいと思います。

フィクションの表象のなかでマイノリティであることでなかなか存在感を示せないというのは単に映画やドラマでアジア人を見かけることが少ないよね、さみしいね、というだけの問題ではありません。現実の社会において俳優の仕事のチャンスが手に入れられない、そもそも製作会社のメンバーも名門大学出身の白人男性と少しの女性や有色人種で構成されてていて、彼らが自分たちの経験を語るためアジア系は創作に出てこないというさまざまな要因が絡まり合って「アジア人の表象が少ない」問題が発生しているわけです。そこで「これだけ不可視化されている現状があるのだから『自分の経験や考えを表で語るのが大切』」= #RepresentationMatters というもとのハッシュタグの話に繋がるんですよね。

上記のような背景から、アジア系へのエンパワメントとしても評価されている作品なので邦題が『クレイジー・リッチ!』で公開予定である理由がパッと思いつきません。あらすじを読む限りそもそもアジア系のアイデンティティと切り離せない作品らしいので、最悪「クレイジー」と「リッチ」は外しても「アジアンズ」は入れたほうがよかったんじゃないのかな~。九月になったら見に行くけどね。

ドラマ『このサイテーな世界の終わり』続編の製作が決定

概要

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イギリスの公共放送局チャンネル4が製作するドラマ『このサイテーな世界の終わり』(原題: The End of The F***ing World)の続編の製作が決定しました~~。めでたい!

NetflixTwitterアカウントや、Variety.comが伝えています。脚本・製作はシーズン1同様 Charlie CovellでNetflix配信日は未定。

 

variety.com

これまでの話(ネタバレなし)

義理の父がいる家から逃げ出してすべてを変えたいアリッサと、自身をサイコパスだと思っていてアリッサの殺人願望があるジェームスが逃避行をするブラックコメディドラマ。父の車を盗んで家出するうちに、仲が悪いデコボココンビの刑事ふたりに追われ...という話。前述のとおりイギリスの公共放送Channel 4で2017年10月に放送され、2018年1月にNetflixで配信が開始されました。皮肉っぽい気の利いたセリフと、随所に挿入される過去形のナレーションのメタ的視点が面白いドラマです。Netflixの「海外作品」ジャンルの大半を占める*1北米アクセントに慣れた耳では「英国アクセント、カッコイイ―」と感じるミーハー心もくすぐられたり。映画ではないけれどロードムービー的な作りで1話あたり約15分、全8話で寝る前やちょっと出かける用事がある前でもサクッと観れて負担にならない長さ。まあ私はつづきが気になるのでイッキ見してしまうんですけどね。

シーズン2の可能性は以前から噂されていましたが、原作のコミックにあるストーリーラインはシーズン1で描ききっている*2ことから、こんなに早く続編のニュースが聞けるとは思っていなかったので嬉しいサプライズでした。シーズン1のエンディングはクリフハンガーかつ、完ぺきな終わり方だったので、あのままにしてもカッコイイかなとは思うんですが。まああのままだとちょっとだけ『テルマ&ルイーズ』と重なるところもあるもんね(※断崖絶壁の谷底にむかって車を急発進したりはしません 笑)

配信日など詳細が気になります。

 

 

*1:韓国、中国の作品は個別のジャンルに分類されている

*2:twitterの海外ファンなどの情報を総合するとどうもそうらしい。未読なので不明です

吉本芸人ななまがりの「キモお兄さん」MVが話題に 同性愛嫌悪助長のおそれ(追記あり)

 

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~心が辛いのでタイトル画像は睨みつけるネコでお送りします~

概要

吉本所属の芸人「ななまがり」の動画がツイッターで話題になっていました。ブログを書くために数回再生してしまったし、再生回数のお手伝いはしたくないのでキャプチャ画像を貼ります。YouTubeで「ななまがり キモお兄さん」と検索すると出てくる動画です。  (8/22追記) 動画が非公開になったようです。ななまがりのお二人のtwitterで謝罪が投稿されています。

 

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画像はスクリーンショットです。

動画1:17から

♪キーモキモキモ修学旅行♪

「すきな子だれ?」

「言わないよ」

「言えよ」

「言わないよ」

「言えよ」

「お前だよ」

「キモッ」

♪キーモキーモキモキモッキモッ

 と繰り返される短いリズムネタ。観ていると自分の脳細胞が死んでいく音が...なんでもないです。

この「キモお兄さん」が顔は濃い青ひげ風メイクでとんねるずの「保毛尾田保毛男」スタイルを踏襲しつつ、服装は上半身裸でジャージ、という「ゲイ」と「職質される不審者」を掛け合わせたようなスタイル。現実とかけ離れたゲイのステレオタイプを体を張って(?)演じつつ、オチはキモッだけ。きつい。2018年によくここまで直球ホモフォビックなネタを発表できたなあ、というのが率直な感想です。

この動画の問題点は「同性を好きになることはおかしい」「ゲイはあなたを狙っている」という今までなんども否定されてきた偏見に満ちた価値観を小中学生や高校生のこどもに広めてしまう恐れがあること。実際にコメント欄に「TikTokから来た」という書き込みがあったり、関連動画で小学校低学年に見える小さな男の子の「やってみた」動画が出てきたりしました。そしてセクシュアリティを自覚したり、疑問に持ち始めたばかりの子にとって地獄のような動画だと思います。女子高時代に親友にガチ恋してた私も半分ぐらい涙目だよ、ホント。この動画をアップロードしているのは吉本興業が「ラフ&ピースミュージック Laugh & Peace Music」名義で出しているチャンネルで、チャンネル概要欄をみると「よしもとアール・アンド・シーでは、吉本興業の芸人ソング・音ネタ・リズムネタなどを 『Laugh & Peace Music』として配信事業各社の聴き放題サービスを使って配信開始します!」とのこと。ビートルズのガチファンというわけでもないので、いつもなら「ああ語呂合わせね、OK」としか思わないんですが、さすがにこれじゃあ世界平和を歌ったジョンレノンも草葉の陰で泣いてるんじゃないの。まあ仏教徒じゃないと思うから比喩の使い方が正しくないような気もするが。

話が逸れてしまいましたが、性的少数者を「周縁の性的逸脱者」「アブノーマルな『趣味』の人々」扱いして際どい笑いをとる(そして平和が訪れるのを望む???)ようなネタはもう古いし、許容されない、という態度をこれからも示していけなければいけないなあと思います。ていうかこっちだって好みがあるんだからね!なんで「狙われてる」前提なんだよ...

 

追記

 「ななまがり」の二人が個人名義のtwitterアカウントで謝罪し、22日22時現在、当該の動画は閲覧できない状態になっています。

 これで一件落着かな。twitter界隈で局地的に話題になってから、一日ぐらいで動画を非公開にした迅速な対応は素晴らしい。企業広報にありがちな「誤解を招きかねない表現だったならお詫びします」という定型文よりずっと人間味が感じられる言葉でよかった。このブログ記事を書いたのは叩きたい、炎上させたいという気持ちからではなく、現実とかけ離れたデフォルメが「笑い」としてメディアやライブ会場などで流布するのは間違ってると思ったからだった。テレビに出る側の人がマジョリティじゃない側の人間をすこしでも想像してくれたら、社会が居心地がいい方向に変わっていけるのかなと思う。あとはやっぱり、非ヘテロ女性として発言してしていく必要性を感じました...頑張るぽょ...